【国境封鎖と感染者追跡】日本にはない【オーストラリアのコロナ対策】


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まだまだコロナが猛威をふるっています。約100年前にも蔓延して世界で約5,000万人、日本で39万人が死亡したスペイン風邪は集団免疫ができ、終息まで最低3年を費やしたとのことですので、コロナももう少し時間がかかるのかもしれません。

コロナについては何が正解か、未だ分からないのが皆の本音だと思いますが、昨年2020年の感染の始まりから世界各国でいろいろな取り組みが行われ、さまざまな成功と失敗の経験が蓄積されています。

コロナ感染対応で優等生と呼ばれるオーストラリアのCovid19対策を数回に分けて紹介します。第一弾はオーストラリアの国境管理など水際対策と市中感染が出た時の初動について紹介します。

オーストラリアの対策は日本とはかなり異なる上、とても理に適っています。皆さんに興味持っていただいたら嬉しいです。ぜひ最後まで読んでください。

簡単に自己紹介させてください。

ハンドルネーム「ノーベル君」と申します。私は日本がバブル経済と呼ばれた1990年代前半、大手電機メーカーに新卒で入社しました。

会社への愛が100%のジャパニーズ・ サラリーマンでしたが、30代後半に日本社会とサラリーマン人生で直面する不自由で画一的な価値観の押し付けに毎日ストレス満タン。

自分の人生を変えようと、海外移住を決意しました。47歳でオーストラリア移住ビザを取得して、シドニーに家族3人で移住しました。仕事はオーストラリア現地企業でマーケティング担当をやっています。

私は、多くの日本人サラリーマンが目指す「出世」は叶いませんでしたが、海外移住して毎日ストレス・フリーをモットー生活しています。

【国境封鎖と感染者追跡】日本にはない【オーストラリアのコロナ対策】

記事目次
1.オーストラリアのCOVID19現地の肌感
 オーストラリアのコロナ感染者数
 庶民のコロナ感覚
2.オーストラリアの大胆かつ迅速なコロナ対策
 国境封鎖
  外国人の入国禁止
  入国者数制限
  自国民の出国禁止
  2週間の完全隔離
 コロナ感染の見える化
  徹底的かつ手軽なPCR検査
  ウイルス感染経路の追跡
3.まとめ

1.オーストラリアのCOVID19現地の肌感

オーストラリアのコロナ感染者数

2021年7月1日時点のオーストラリアのコロナウイルス感染状況ですが、累計感染者数は30,643人の世界127位(日本799,978人の世界34位)、累計死亡者数は910人(日本14,781人)となっています。

オーストラリアの総人口は2,550万人、日本は1億2,713万人ですから人口10万人当たり感染者数はオーストラリアが120人、日本が629人です。オーストラリアが日本の感染数よりもかなり低い状況にあることが分かります。

庶民のコロナ感覚

オーストラリアでは昨年大型クルーズ船の乗客がPCR検査をせずに下船し、感染者が国中に広がりロックダウンを行いました。しかし2020年5月下旬のロックダウン、行動規制緩和後は基本的にオーストラリア市中にはコロナウイルスは居てはいけない(コロナ・フリー)、ウイルスがいたら、駆除するという感覚です。

一旦市中感染がなくなれば、ウイルスがオーストラリアに入ってくるリスクは海外からということで、徹底した水際対策が行われています。

後述しますが、海外から何らかの経路で市中に入った場合はすぐに感染経路を特定し、ピンポイントで集中して感染を封じ込めます。封じ込め後は通常の社会を再開させ、数週間から数か月間はコロナ市中感染が発生せず、国民は通常の暮らしに戻ります。外でマスクをする人も稀で、もちろん飲み会OKです。しかし再び市中感染が発生すると、マスク着用義務や様々な規制が速攻で決定され即日に実行されます。

2.     オーストラリアの大胆かつ迅速なコロナ対策

国境閉鎖

オーストラリアのコロナ対策の特徴が厳格な水際対策です。

外国人の入国禁止

2020年3月20日にオーストラリアはバイオセキュリティ法を根拠にオーストラリア国籍とニュージーランド人、永住権保持者以外のすべての外国人がオーストラリア入国することを禁止しました。この対策は現在まで継続されており、ごくわずかな例外を除きすべての外国人は入国を拒否されます。

このごくわずかな例外というのは外国政府関係者、医療関係者、オーストラリアの国益に重要な外国人となっており、観光客、ビジネス客、ビジネスワーカー、学生、ワーキングホリデー等の外国人は入国できません。

バイオセキュリティ法は2015年に制定され最大5年の懲役、66,600豪ドル(約550万円)の罰金、またはその両方を含む違反に対する罰則が科せられます

入国者数制限

オーストラリア政府は海外からの入国者に対する検疫と入国後義務化された隔離施設のキャパシティがパンクしないように、入国数枠というのを決めています。当初8,000人/週の人がオーストラリアに入国できましたが、2020年7月には4,000人に削減されています。

これはたとえオーストラリア国民だとしても、順番が来ないとオーストラリアへの航空券が購入できません。

入国数制限とオーストラリアへの直行便、経由便の運休による理由で、2021年1月時点で37,000人の国民がオーストラリアへ帰国できず、海外で立ち往生しています。政府は物理的に帰国できない自国民のために計28回の特別帰国便(メルシー/レパトリエーション・フライト)が運航されています。

この入国者数制限ですが、オーストラリア連保政府、州政府はホテル以外に隔離専用施設を建設しています。建設終了後、隔離者対応力が高まれば、入国者数制限は緩和されると言われています。

海外に取り残されているオーストラリア人は自国民の入国を認めないこの政策を非民主的だとして強く批判しています。

自国民の出国禁止

2020年3月20日のバイオセキュリティ法による国境封鎖はオーストラリアへの入国のみならずオーストラリアから海外への出国も厳格な管理下に置かれました。

オーストラリア国民と永住者は特別な事情が無い限り、オーストラリアを出国できません。これは出国した国民が海外でウイルスに感染するなど滞在国での安全が脅かされる、または帰国できなくなることを危惧しています。政府の特別帰国便によって帰国する場合は、膨大なコストがかかり結果的に国民に転嫁することになるからです。

では海外にいる家族に不幸があった場合はどうなのでしょうか?「その国の政府発行の死亡証明書」があると出国許可が下りやすいと聞きます。「危篤」では難しいようです。

オーストラリア国民と永住者はオーストラリアから出国ができませんが、それ以外のビザ保有者(学生、短期滞在者)はPCR陰性証明書があればオーストラリア出国は問題なくできます。

2週間の完全隔離

ーストラリアは入国者すべてに2週間のホテル隔離を義務付けていますホテルは政府が指定し、14日間は1歩も部屋の外へ出られません。空港からホテルまではオーストラリア軍と警察によって入国者が逃亡(?)しないようしっかり管理しています。

しかもホテル滞在費はタダではありません。3食付きで3,000豪ドル(約25万円)/人なり。

隔離違反者には最大約50,000豪ドル(約430万円)の罰金と12か月の禁固刑が科せられる可能性があります。

隔離中の状況は多くの方がブログに書いたりYouTubeにアップしていますね。
ホテル隔離期間をどうストレスなく過ごすかは結構な悩みですね。特に食事に皆さん苦労されていると聞きます。

日本からホテル隔離のある国へ駐在や長期出張で行かれる方にお勧めのグッズがあります。それはお一人様用の炊飯機です。日本から一人用炊飯器と変圧器、お米を持っていけば隔離ホテルで炊き立てのご飯を毎日食べれます。日本人には最高のストレス解消法でしょう。参考までに(私も買った)超おすすめの一人用炊飯器と変圧器を以下に紹介します。滞在する国に合わせて変換プラグも忘れないでください。

オーストラリアのホテル隔離は日本のゆるやかな「自主隔離」と比べて大変厳しいものですが、それでもまだまだ抜け穴があり、時折ウイルスが市中へと漏れています。
理由は様々ですが、食事配膳スタッフ、清掃スタッフが対策不足でウイルスを持ち出すケースは当初多くありました。中にはぜんそくなど呼吸器系持病のある人が使うネブライザーを隔離中の感染者が使用し、ネブライザーの霧が部屋の通気口から隣の部屋に伝わり、隔離終了間際の人に感染させました。うつされた人は感染初期だったため、隔離終了時のPCR検査を潜り抜けたということです。

また隔離中の若い女性が隔離ホテルの警備員と恋仲になってしまい、女性が警備員を自室に招き入れ、警備員が感染したというコロナLOVEによる市中感染もありました。

昨年2020年11月にモリソン豪首相は日本の菅首相と外国首脳として初めての会談を実現しました。帰国後モリソン首相は首相官邸で2週間の自主隔離し、国会はオンラインで参加しています。それくらいオーストラリアは徹底しています。

https://www.asahi.com/articles/ASNCF3PXFNCDUHBI00Q.html

なぜ、多くのことにおおらかで寛容、いい意味悪い意味で「いいかげん」なオーストラリア人がここまで厳しく水際対策をするかですが、私が想像するに歴史的な背景があります。

オーストラリアは1800年代後半にイギリスの植民地、特にイギリスの罪人を収容する流刑地として歴史が始まりました。多くのイギリス人が海を渡りオーストラリアに入植していったのですが、人間だけでなく動物や植物も持ち込まれました。南半球には生存しない種が入ることでオーストラリアの生態系の一部が崩れ、絶滅する動植物もありました。人間については先住民のアボリジニの人たちはイギリス人が持ち込んだ菌やウイルスに抵抗力がなく、命を落としたそうです。

そうした事態への深い反省からオーストラリアでは外国からの持ち込まれる植物、食物に対する厳格な規制があります。特に植物の種子や土は厳しく取り締まっています。

このようなことにオーストラリア人は馴れっ子になっており、異種なもの対して戦うというよりもまずは異種を持ち込まない、人は異種から距離を置くという考え方が定着しています。

今回の異種、コロナウイルスについても、まずやることは「持ち込まない」、入ってしまったら「見つけて駆除する」、駆除できない場合はロックダウンで「距離を置く」というステップを確実に実行しています。あくまでも個人的見解ですが。

コロナ感染の見える化

徹底的かつ手軽なPCR検査

オーストラリアが力を入れているコロナ対策の一つは徹底的なPCR検査です。

街中にはPCR検査会場があり、予約もなく簡単に行け、24時間以内に携帯電話のSMSに結果が送られます。オーストラリア人、外国人を問わず、何回受けても無料です。

オーストラリアでは「風邪かな?」と感じたら「Get Tested!(PCR検査受けよう)」が当たり前になっています。

ウイルス感染経路の追跡  

オーストラリアでは一旦コロナウイルスが市中に入ってしまった場合、感染者の足取りを徹底的に追います感染者がどこでいつ誰から感染したのか、そしてどこでいつ誰に感染させたのかを時系列で追っていきます。

残念ながら、昨年リリースしたスマホアプリCOVID Safeはアプリの不具合とBluetoothでの接触確認の技術的な限界により不調に終わりました。

しかしその代わりに、感染が確認されたらその感染者に過去の行動履歴を詳細に確認します。最近はセキュリティカメラの映像と照らし合わせて証言とマッチしているか確認する場合もあります。感染者は虚偽の行動履歴を報告すると、処罰の対象で悪質な場合は犯罪となります。感染者の立ち寄り先は詳細に政府ウェブサイトに掲載されます。対象の場所と時間に居合わせた人は「カジュアルコンタクト」と呼ばれ、PCR検査と結果が出るまでの自宅待機を強く推奨されます。

職場や学校、家庭で感染者と数時間以上コンタクトした人は濃厚接触者として即時PCR検査と14日間の自主隔離を政府から要請されます。

このような地道なウイルスの追跡により、感染の流れが同線化され、感染が一部地域限定なのかそれとも広域なのか、ウイルスの感染力は強いのか弱いのかを専門家が分析し、緩やかな規制(集会の制限、ソーシャルディスタンス、マスク着用義務等)で済むのか、それともロックダウンという厳しい規制が必要なのか次のアクションを実行します。

もちろん、大量の市中感染者が一挙に出てしまうと、このような追跡はできなくなります。厳しい水際対策とPCR検査の十分なキャパシティがあるからこそウイルスを追えているのです。

こちらのサイトhttps://experience.arcgis.com/experience/1606ae83c91e4dc68c95170e7f37e9e9

政府の発表情報をもとにマップで感染者の足取りを開示しています。1時間おきにアップデートしていますので、ぜひ参考に見てください。

さらに各州政府は感染者の足取りだけでなく、感染していない国民の足取りもトラックしようとしています。州によって義務になっている州となっていない州がありますが、国民は屋内施設に入店するときにスマホでQRコードスキャンを求められます。

これは濃厚接触者だけでなくカジュアル接触者も含めて情報を収集し、すみやかなPCR検査と自主隔離を促す目的です。政府による監視と揶揄されますが、感染経路の追跡という理由で利用されるのであれば国民は概ね納得しています。

このブログを書いている7月4日、シドニーは2週間のロックダウン中です。
このシドニークラスターの始まりは6月11日に米国FedExの貨物機パイロットをシドニー空港から宿泊ホテルへ送迎した運転手のインド型デルタ株感染でした。現在累計で約200名の感染者が出ています。州政府は運転手の足取りからどのように感染が広がったか追跡しており、200名の感染のうち14名の感染経路が不明ですが、残りの感染者は経路が判明しています。今回の感染経路を追う中で、州政府はデルタ株による感染スピードの速さと感染者が電車や車で広域に移動している観点からシドニー全域におけるロックダウンを決めました。今は収束することを願っています。

まとめ

オーストラリアは世界の中でコロナ対策に成功している国の一つです。

成功のポイントは外国人の入国を禁止する、自国民の出国を禁止するという大変厳しい国境管理です。国境でウイルスの侵入を止め、次の関所は2週間のホテル隔離で帰国者がウイルスを持っていないか管理します。

それでもウイルスは市中に潜り込むため、その時はPCR検査と感染経路の追跡でウイルスがどこにいたのかを見える化し、ウイルスに近づかない、近づいた人はPCR検査するという非常に理に適った対策が行われています。

オーストラリアのコロナ感染状況は日々変わっています。一日短い時間でもいいのでオーストラリアの現地TVのニュースを見ることを強くおススメします。過去のブログ【解説】日本から海外のテレビ番組/TVニュースを視聴する方法を見ていただければ、日本からオーストラリアのニュースを視聴する方法が分かります。

オーストラリアのコロナ関連情報については、他の記事も参考になると思いますのでぜひ読んでください。

【ロックダウンと休業補償】日本にはない【オーストラリアのコロナ対策】

「海外から眺める【日本のコロナ感染対策】少し変(ヘン)じゃない?」

「オーストラリア コロナウィルスの状況(2020年7月22日)」

いかがでしたか?

今回の記事が皆さんの海外移住の参考に少しでもなれば嬉しいです。

これからも役立つ情報を紹介していきます。

ではまた。

※ぜひ本記事を皆さんのSNSでシェア、拡散いただき、たくさんの方に読んでもらえると嬉しいです。よろしくお願いします。